最短で原因を切り分けるチェックリスト
PCRで全くバンドが得られない場合、原因はDNA、プライマー、PCR条件、試薬、電気泳動のいずれかにあります。やみくもに条件を変更するのではなく、原因を一つずつ切り分けていくことが重要です。本記事では、確認すべき順番に沿って対処法を整理します。
① ポジティブコントロール・ネガティブコントロールを確認する
最初に確認すべきなのは、PCR反応自体が正常に機能しているかどうかです。
- ポジティブコントロールが増幅しない場合
- 試薬の劣化
- PCR条件の設定ミス
- サーマルサイクラーの設定ミス
- ネガティブコントロールが増幅する場合
- コンタミネーション
この確認を行うことで、「鋳型DNAの問題なのか」「PCR反応全体の問題なのか」を切り分けることができます。
② アニーリング温度を下げてみる
ポジティブコントロールは増幅するが目的サンプルだけ増幅しない場合は、プライマーの結合効率が十分でない可能性があります。
まずはアニーリング温度を5℃以上下げてPCRを行ってみることをおすすめします。この段階では非特異的バンドが出ても問題ありません。まず目的サイズ付近にバンドが現れることを確認し、その後に温度を少しずつ上げて最適条件を探索します。
③ 鋳型DNAを希釈してPCRする
実際には、PCRが失敗する原因として最も多いのは鋳型DNAに含まれるPCR阻害物質です。そのため、DNAを再抽出する前に、まず希釈を試してみることをおすすめします。
- 10倍希釈
- 20倍希釈
- 50倍希釈
など複数の濃度でPCRを試してみてください。DNA濃度は低下しますが、それ以上にPCR阻害物質も希釈されるため、増幅が改善することがあります。
④ 鋳型DNAを再抽出する
サンプルに余裕がある場合は、DNAの再抽出が最も確実な改善方法です。植物や土壌などではPCR阻害物質が多く含まれるため、一度の抽出で十分な品質が得られないことがあります。
⑤ サンプルが残っていない場合
再採取できない貴重なサンプルでは、既存のDNAを精製し直す方法があります。市販のDNAクリーンアップカラムを使用して精製し、溶出液は2回に分けて回収すると、DNA回収率を維持しながら不純物を低減できる場合があります。
⑥ プライマー濃度を見直す
プライマー濃度が低すぎると十分な増幅が得られません。逆に高すぎてもプライマーダイマーや非特異的増幅の原因となるため、推奨範囲内で濃度を変更して検討します。
⑦ 電気泳動にも原因がないか確認する
意外と見落とされるのが、PCRではなく電気泳動側の問題です。例えば、次のような点に問題があると、PCR産物が存在していても確認できないことがあります。
- アガロース濃度
- バッファの調製ミス
- 染色試薬
- 電圧
- 泳動時間
まとめ
PCRが増幅されない場合は、次の順番で確認すると効率よく原因を切り分けられます。
- ポジティブコントロール・ネガティブコントロールを確認する
- アニーリング温度を5℃以上下げる
- 鋳型DNAを希釈してPCRする
- DNAを再抽出する(サンプルに余裕がある場合)
- DNAをカラム精製する(サンプルが貴重な場合)
- プライマー濃度を調整する
- 電気泳動条件を確認する
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