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参考資料

DNA種判別試験のケーススタディ

今回はDNA種判別試験にて種名絞り込みのための追加実験を行った事例をご紹介し、DNA種判別の実験目的が実験計画の作成に重要であることをお伝えしたいと思います。

通常は、生物を「種レベル」でDNA判別する目的でご依頼を受けることが一般的ですが、DNAが首尾よく採取できたとしても「種」レベルの判別が難しいことがあります。その場合の例として、実験で得られた塩基配列に判別候補となる生物種が非常に近い類似性で複数該当するケースが挙げられます。判別対象とした遺伝子領域の塩基配列が複数の生物間で非常に似ている場合に起こりえます。

このような場合、基本的には該当した生物種が共通して持つ生物分類まで分類のレベルを上げて(生物の分類は界・門・綱・目・科・属・種の順に細かくなります)、「属」や「科」レベルでご報告します。

 しかし、「属」レベルでは実験目的を達することができないというご依頼のケースもあります。例えば属レベルではなく生物の種名が「A」か「B」かを見分けたいときです。データベースに登録されている「A」と「B」の塩基配列の違いが十分にある場合は実験目的を達することができますが、同じ属の近縁種である等でその違いが殆どない場合は、実験目的を達することができません。

その場合は、追加の実験計画を立案し実行することになります。以下はその具体例です。

当初判別対象とした遺伝子領域ではない部分に「A」と「B」の塩基配列の違いを見つけることができないかをデータベース上の「A」と「B」の塩基配列を比較し精査し、同時に文献調査も行います。その上で、区別の候補になりそうな領域をいくつかピックアップし、その生物種の領域に特化したプライマー(特定の遺伝子領域を増幅させるきっかけとなる試薬です)を製作して実際の実験を行います。

 この電気泳動図は弊社が製作したプライマーを用いて近縁種間の判別に成功した事例です。判別対象試料と標準試料として使用したポジティブコントロールとのバンドの類似性とネガティブコントロールと判別対象試料のバンドの違いから、判別対象試料はA生物種であると判別しました。

 一回の実験で成功することはあまりなく、何回かトライを繰り返しながら最適なプライマーを選抜すること、また実験の信頼性を高めるために由来が明確な標準試料をご準備頂くなどご依頼者様の御協力も頂きながら進めていく作業になります。

 なお、種レベルよりも細かい品種を鑑定したいという場合にも、基本的な手順は同様です。

 

 このように実験目的が全体の実験工程の立案に大きく関わることになります。なお、最初の段階から「A」と「B」の違いを判別したいことが明確であれば、最初の塩基配列解析をin silico 解析(データベース上の確認)で行い、実験工程を短縮することもできます。